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2025年3月13日

アジア太平洋地域における無形文化遺産保護のための研究フォーラム国際会議「無形文化遺産保護研究の新領域」を国立民族学博物館で開催しました(2025年2月13日~15日)

「アジア太平洋地域における無形文化遺産保護のための研究フォーラム」事業(2022~2026年度)において、国際会議「無形文化遺産保護研究の新領域」を、2025年2月13日~15日に国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開催しました。

無形文化遺産研究の様々な「新領域」を3日間にわたって紹介し議論する本国際会議のプログラムは、各日、基調講演とテーマセッションで構成し、公募により選ばれた発表者を含む約50名が、連日会場に集い活発に意見を交わしました。

初日は、大日向史子氏(無形文化遺産保護条約事務局長/ユネスコ文化セクター無形文化遺産課)による基調講演「2003年条約の将来にとってなぜ研究が重要なのか」から始まり、コミュニティを尊重する研究が、無形文化遺産保護の意識や効果的な取組みの強化をもたらしていると述べました。続くセッション1「無形文化遺産の継承と教授法」では、生きた遺産の継承の在り方について、民族的マイノリティの保護とローカルコミュニティの社会的アイデンティティという2つの異なる観点から議論を深めました。セッション2では、「コミュニティのエンパワーメントと包摂性」をテーマに、コミュニティという言葉の示す範囲や聖地をめぐる観光の新たな側面、ユネスコ無形文化遺産登録のコミュニティへの影響について議論しました。会場からの質問が尽きない中で1日目を終え、レセプション会場に場所を移して更なる意見交換が続きました。
 2日目は、ミシェル・ステファノ氏(米国議会図書館アメリカ民俗センター)が「無形文化遺産は何に対して保護されているのか? 現在の政策と実践における優先順位の転換」と題して基調講演を行ない、助成金プログラム(CCG)を例に挙げて、コミュニティの文化を守るために外部機関がどのように協力し支援できるかを具体的に示しました。セッション3「移住と難民化」では、3名が研究発表を行ない、帰属するコミュニティを離れて生きる人々と無形文化遺産の個人的・社会的な関係や文化的アイデンティティの保護に関わる法的環境について議論しました。午後は、IRCI研究フォーラム事業で2024年10月から実施している「若手研究者育成のための出版プログラム」特別セッションとして、プログラムに参加する7名の若手研究者が研究発表を行ないました。この機会が国際的な研究会での口頭発表が初めてという参加者もいる中、皆自信に満ち、落ち着いた様子で発表を終え、質疑に臨みました。
 3日目の基調講演「無形文化遺産の経済的側面:概念、課題と機会について」では、ハリエット・ディーコン氏(データサイエンス・AI・モデリング卓越センター/ハル大学ウィルバーフォース研究所)が、無形文化遺産の脱文脈・過剰商業化リスクに対処するためのユネスコのガイダンスノートの作成過程に触れながら、経済発展と保護活動との調和には、広範な視点から課題を捉えることが大切であると強調しました。続くセッション4「無形文化遺産と持続可能な開発目標への法的枠組み」では3名が登壇し、無形文化遺産における知的財産権保護の課題やコミュニティの権利に関わる話題を提供しました。午後のセッション5「無形文化遺産とニューテクノロジー」では、言語や手工芸を例に、より便利で効率的になるIT環境の利用可能性とともに、ITインフラの持続性や手作業への影響に対する懸念や課題が示されました。
 以上3日間を締めくくる総合討論では、次なる「無形文化遺産保護研究の新領域」を念頭に、野嶋洋子IRCI研究担当室長とともに進行役を務めたクリストファー・バラード氏(オーストラリア国立大学)が、本会議を通して様々な可能性が示されたと前置きした上で、継承過程を理解する重要性、無形文化遺産の学際的あるいは反分野的な特性と分野間の更なるコミュニケーションの必要性、そして、これからの研究領域としての気候変動の重要性に触れ、無形文化遺産研究の意義をまとめました。会場からは、様々な分野の研究者が集ったことで、無形文化遺産継承の担い手と研究者の間にある専門性の位置づけの課題や、研究の担い手の多様化と国際協力のニーズなどが明らかになったといった意見がありました。

このような規模の対面での国際会議を実施するのは、コロナ禍以後は初めてでしたが、3日間の会期を無事に終えることができ、また、オンライン配信には17か国から86名の視聴がありました。本国際会議の記録については、来年度、成果物として論文集の刊行を予定しています。

尚、全体プログラムと各発表の要旨(英語)はこちらからお読みいただけます。

  • 国際会議参加者集合写真(国立民族学博物館前にて、2025年2月13日)

  • 大日向氏による国際会議初日の基調講演(国立民族学博物館、2025年2月13日)

  • ステファノ氏による国際会議2日目の基調講演(国立民族学博物館、2025年2月14日)

  • ディーコン氏による国際会議最終日の基調講演(国立民族学博物館、2025年2月15日)

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